宮本武蔵を題材にした作品は数え切れないほどあります。そしておそらく今の宮本武蔵のイメージは、作家「吉川栄治」が作り出したものでしょう。
これまで作られたドラマや映画の作品は、吉川栄治さんのベストセラー小説「宮本武蔵」を元ネタとしているものがほとんどだと言えます。
数年前にも大河ドラマで有名歌舞伎役者さんが武蔵を演じられて、とても話題になった記憶があります。
しかし宮本武蔵の人物像と小説には、かなり違ったものがあるようです。今回は宮本武蔵の謎に迫ってみたいと思います。
宮本武蔵の小説の謎とは?
吉川版の武蔵には
- 又八という、ちょっと頼りない幼なじみがいて
- お通という恋人がいて
- 朱美とお甲という妖艶な母子がいて
- 沢庵という怪しげな和尚さんがいて
というクセのある登場人物が絡んできていますが、そもそもこのお通の存在からして吉川栄治の創作のようです。
実際のところ、宮本武蔵は「生涯妻を娶らなかった」と言われています。
しかし逆に妻がいたという説もあり、武蔵が過ごした兵庫県や熊本県では「宮本武蔵には妻がいた」という言い伝えが残っています。
ただ言い伝えは残っているのですが、実際の史料などは存在していないので、本当のところは謎のままです。
お通の存在とは?
ではこのお通は本当に存在していなかったのでしょうか?
吉川栄治がお通のモデルにしたという「小野通」という方が実在していますが、実際は武蔵とはあまり関係がなかった様子です。
吉川版武蔵に親しんだ自分としては、正直少しショックを感じてしまいます。映画やドラマで武蔵を慕ってどこまでも追っていくあのお通は存在していなかったのか、と。
そんな風にショックを受けていると、きっと吉川栄治から「小説と歴史を混同するな」と言われそうです。
このセリフは、あまりにも有名になった自身の作品に対して、史実と小説を混同したファンに対して吉川栄治が言った言葉だとか。
こういうエピソードが残っているということは、それほど人々に強烈な印象を与えている証拠だと言えるでしょう。
実際の宮本武蔵とは?
これほど有名な歴史上の人物にも関わらず、ほとんど史料が残っていません。吉川栄治自身も「ほとんど空想」だと言っているように、材料になりそうな資料がなかったのでしょう。
それでも、これほど人々の印象に強く残るような宮本武蔵イメージを植え付けた吉川栄治は、作家としてとても素晴らしいです。
と同時に、宮本武蔵自身も何かしら人を惹きつけるものを持っていたのでしょう。
吉川栄治が作り出した武蔵像は今までも、そしてこれからも強烈なインパクトを残していくと思います。
小説「宮本武蔵」、興味のある方はぜひ読んでみてください。ただし、「小説と歴史を混同しない」ようにしてくださいね。
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